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~西洋銅版画の世界を歩く~

TOPICS

作品をより楽しむためのトピックを集めました!

​西洋銅版画の世界の中から、少し不思議な2つの作品、

「出現」と「飛ぶ魚」に関する4つのコラムを紹介します。

『出現』

コラム① 『出現』~宙に浮かぶ生首!?

コラム② 《出現》と3枚のサロメ

『飛ぶ魚』

コラム③ 『銅版画に使われる技法のいろいろ』 

コラム④ フォーヴィスムと「飛ぶ魚」

コラム①
『出現』~宙に浮かぶ生首!?

出現.jpg

エミール・シュルピス『出現』

 (ギュスターヴ・モロー原画)

『出現』は、宙に浮かぶ生首と、それを導いているような女性の姿が印象的な作品である。

 

この作品は、新約聖書のサロメのエピソードが元になっている。ユダヤ王の誕生日に、サロメという女性が舞を披露した。その舞がとても素晴らしいものだったため、王は褒美に何でも望むものを与えることにした。すると、サロメは、母親から言われるままに、聖ヨハネの首をほしがったのである。実際は盆に載せて生首が受け渡されたとされているが、この『出現』では、生首がサロメの元に飛んでいくかのような独特の表現が特徴的である。

 

このサロメという女は、「ファムファタル」と呼ばれ、男の運命を変える程に魅惑的な女性として、この『出現』以外にも多くの絵画や文学のモチーフになっている。

2021/8/19 (担当:Y. M.  編集:A.U.

コラム①

コラム② 
  《出現》と3枚のサロメ

左から、《ヘロデ王の前で踊るサロメ》、水彩の《出現》、油彩の《出現》

 ギュスターヴ・モローはサロメを似た構図で何度も描いている。全て1876年頃に描かれた作品だが、油彩の《出現》が最後に描かれた。

 

 比較して見てみると、サロメの印象はずいぶん異なる。《ヘロデ王の前で踊るサロメ》は東洋風の衣装を着、蓮の花を持った「宗教的な魔術師のような人物」のサロメを描きたかったと画家自身が残している。水彩の《出現》においては、神秘的な印象は薄れ、伏目がちに手を伸ばすサロメは、どこか弱々しく見える。水彩の出現の下部の余白部分には、画家による「これは下絵だから誰にも見せないで欲しい」という指示があった。一方で油彩の《出現》は、男のような骨格や、全裸であることから、雄々しい印象の方が強い。首へ向かって手を伸ばすというよりは、指を指してヨカナーンを弾劾しているようである。

 

 3枚のサロメの違いは何を意味するのか。モローのサロメの解釈について考えてみるのも一興である。

2021/8/19(担当:S.H. 編集:A.U.

コラム②

コラム③ 
  『銅版画に使われる技法のいろいろ』

銅版画の制作に用いられている技法について紹介する。

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​ジョルジュ・ルオー『飛ぶ魚』 エリオグラヴュールという技法が用いられている。

 版画と聞くと、彫刻刀などで板を彫り、できた溝にインクを染み込ませる方法が一般的かもしれない。しかし実際にはそれ以外にも様々な技法がある。酸などの作用によって銅板の表面を腐食させることで

凹凸をつくる方法も、有名な版画技法のうちの一つである。例えば、エリオグラヴュールと呼ばれる技法では、銅板に感光剤を塗り、その上に絵画などをのせて光をあてたのち、銅板を酸にさらすという手順で版画が制作される。感光剤は光にあたると固まるため、光が絵画を通過して銅板まで達した部分のみ感光剤が固まり、酸による腐食から銅を保護する役割を果たす。このように、光の到達度合いによって銅の表面に凹凸をつくって作品を完成させるのが、エリオグラヴュールと呼ばれる版画技法である。

2021/8/21(担当:Y. K. 編集:A.U.

コラム③

コラム④ 
   フォーヴィスムと「飛ぶ魚」

左から、ルオー《飛ぶ魚》、シュルピス(モロー原画)《出現》

「野獣(仏:fauve)の檻の中にいるようだ」

 1905年、パリのサロン・ドートンヌの一室にて、若手画家たちの作品を見た批評家の発言である。この発言から、彼が見たような強烈な色彩、激しいタッチを特徴とする一連の絵画運動を「フォーヴィスム」(野獣派)と呼称するようになった。

 さて、「飛ぶ魚」の原画作者であるジョルジュ・ルオーは、この「フォーヴィスム」に分類される画家である。「飛ぶ魚」そのものはモノクロの銅版画であり、フォーヴィスムの特徴である激しい色彩表現こそないものの、骨太の線や全体の雰囲気にはその影響が見て取れる。

 なお、余談ではあるが、ルオーを初めとするフォーヴィスムの画家達は、ギュスターブ・モローに師事していたという。同じ会場内にあるモローの版画「出現」も、ぜひ一緒に鑑賞してみてほしい。

2021/8/22(担当 S.K.  編集:A.U.)   

コラム④
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